それは何といっても『2001年宇宙の旅』です(今のところ)。宇宙空間の暗さと静けさは、他のSF映画にはない独特の重厚感があります。そし哲学的な雰囲気。
この映画は、見た人の解釈が色々と分かれるとは思います。映画の制作と同時進行で書かれたA.C.クラークの小説を読めば、まあそれなりの解釈が出来るかもしれませんが、それでは「まあそれなりの解釈」しか出来なくなってしまうのです。僕がそのいい例かもしれません。
それでも何回見ても飽きない作品です。それがベスト1の理由。
まだ見ていない人、まずは映画を見ましょう。純粋に映画『2001年宇宙の旅』を楽しむには、小説はひとつの解釈法という受け止め方で読み、クラークの書いた続編『2010年宇宙の旅』『2061年宇宙の旅』『3001年宇宙の旅』は読まない方が良いでしょう。当然ハイアムズ監督の『2010年』も見ないのが得策。そして自分なりの解釈を絞り出すのが、この映画の(どの映画も?)醍醐味なのです。
すでにこの映画を見て自分なりに解釈している人、あなたには倉田わたるさんの『2001年宇宙の旅』の真相をお薦め。「こういう考え方もあるのか」と感動します。
ファンにお勧めの本
THE MAKING OF KUBRICK'S 2001 editional by Jerome Agel
(a SIGNET BOOK published by The New American Library, Inc.)
『2001年…』の原作となったクラークのThe Sentinel(「前哨」)や、公開当時の観衆の反応、キューブリックへのインタビューなど、盛りだくさん。全96ページある写真を見ているだけでも楽しめる。
ソニー・マガジンから邦訳本も。タイトルは『メイキング・オブ・2001年宇宙の旅』
画像はないものの、その全訳は
インターネット上でも読める。
未来映画術「2001年宇宙の旅」(晶文社刊 ピアーズ・ビゾニー著/浜野保樹・門馬淳子訳)
待ちに待ったメイキング本の邦訳。ディスカバリー号の初期段階スケッチ、モックアップの写真など、4,700円の価値はある!
『2001年宇宙の旅』関連のページ
THE KUBRICK SITE
その名の通り、キューブリックとその作品を扱っている(著作権もクリアしているとか)。『2001年』に関しては評論、インタビュー記事、1965年当時の脚本など多くのスペースを割いている。
2001: A Space Odyssey - 30 Years On
賑やかなトップページは『2001年』のイメージとは違う気がするが、主宰者の『2001年』への愛が伝わってくる。
2001:A SPACE ODYSSEY
キューブリックについてのホームページの一部。画像が豊富。
アメリカ映画の部屋 このページをご覧になってリンクしてくださいました。
メイキング・オブ・キューブリック:「2001年宇宙の旅」山川コタチ訳
ジェローム・アジェルのメイキング本の私訳。しかも全訳!
『2001年宇宙の旅』における厭世観
人間が進化させられ、「超人」になる。
進化して、ではない。進化させられる、なのだ。
もうこれ以上、自力では進化できない。だから進化させられるのだ。
類人猿が人間への進化を促されたのと同じように、人間も「モノリス」(『神』)によって「超人」に進化させられた。
『2001年…』はまるでこう語りかけてくるようだ。
創造主気取りで人工生命(この映画ではHAL9000)を創り出す人間。いつかは(HALが殺人を犯したように)自らが創り出したその生命体に殺されるだろう。禁断の「知恵の実」を食べ、偶像を造り、同類を殺す人間。結局何かハイクラスのもの(『神』)に頼らないとまともに存在できない人間なんて代物は、どうにもならないバカなのだ。
では人間が生きている理由とは、進化させられるのを待つことなのだろうか?
パンを買うために列に並ぶのと同じように、進化させてもらうのを待つ存在。
人間への諦め。この世への失望。
日本では「文部省特選」映画だ。