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1.コロンボのファーストネームは?
    不明。(設定されていない)
    しばしば犯人に尋ねられるが、たいてい"Lieutenant"と答えている。
    もちろんみんなが彼を"Lieutenant Columbo"(コロンボ警部補)と呼ぶからだが、 日本語版の「警部です」では原語の雰囲気はあまり伝わらない。

    「祝砲の挽歌」では、犯人ラムフォードの"Do you have a first name?"という質問に対し、「あたしをファーストネームで呼ぶのはかみさんだけ」と答えている。(日本語版では 別の台詞があてられている)

    そもそもコロンボのファーストネームが出てこないのは、「コロンボのプライベートは 出さない」という、制作当初の「決めごと」の名残。
    コロンボが警察署内にいるシーンすら撮らないというこの方向性は後に変更され、 (「別れのワイン」や「権力の墓穴」)「歌声の消えた海」ではプライベート バカンスの船上を舞台に設定、新シリーズ「かみさんよ、安らかに」では ついに肉親まで登場する。
    しかしファーストネームだけは未だ明かされていない。

    "Phillip"説があるが、これはトリヴィア本作家が「つくりだした」名前ということだ。
    (詳細については The Ultimate Lieutenant Columbo SiteのColumbo’s First Name and The Supreme Court を ご覧いただきたい。なかなか面白い話が読める。同サイトでは、コロンボのIDカードを拡大し、 そのサインを読みとる試みをしていたが、確かに頭文字は"F"か"P"に見えなくもない)

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    参考:Frank?
    さて、ここに一枚の画像がある。これは日本テレビが新シリーズの放映開始時に ノヴェルティとして製作したテレホンカードだ。見ればLAPDのIDカードが写っている。

    これを拡大したのが下の画像。

    明らかにFrank Columboとタイプされている!やはりフランクなのだろうか?
    このIDをよく見ると、本来、顔写真が貼ってある部分(カードの白い地の左下あたり)に 写真がなく、黒いシミになっている。
    このテレホンカードで使われているIDカードが、もし実際の小道具を使って 撮影したものだとすると、旧シリーズで使っていたIDカードの写真を、 新シリーズ用のものに交換している最中(旧作のIDの写真は、『殺人処方箋』の頃の 小綺麗なコロンボなので)、その顔写真が間に合わないまま(あるいは貼り忘れて) 撮ったもの、ということになる(撮影されたであろう時期に照らしあわせても ありえる)。

    ただ、あれだけファーストネームを公式に明かそうとしない関係者たちが、 こんなに簡単にそれと判別できる素材を出すとも思いがたく、この宣材が 日本のオリジナルとも考えられる。つまり日本の関係者が、聞きかじりで 「フランク」とタイプしたカードを作って撮影したのではないか?
    The Ultimate Lieutenant Columbo Siteの運営者であるテッド氏にメールで この件を問い合わせてみた。彼によると・・・

    「あの写真についてはThe Ultimate Lieutenant Columbo Siteの "Columbo's ID Badge"というコーナーでも検証しているが、番組でこのIDが使われていたとは 考えにくい」
    (詳細は同サイトを参照)

    とのこと。
    実際、このIDがどうやらイギリスのTVガイドで初登場したものであることなどを 理由に、同サイトではこれを撮影用のプロップではないと判断を下している。

    この画像を送っていただいた今泉氏のコメント。

    わたしもドラマの助監督をしているので、なんとなくですが・・・
    まず、ドラマ上どうしてもゴマカシがきかないシーンがある場合 (というかファーストネームのないIDカードなどあるわけないと思うのですが・・・) ウソでも書いておかなければなりません。
    例えば、黒澤組とかでは、映らなくてもタンスに中身を入れておかなければなりません。映らなくても、その撮影されているセットを本当の状態にしておかなければ ならないのです。それは、大げさとしても(アメリカはモット合理的なシステムです) ある程度はやっておかないとシラケてしまうのです。
    そして、現場や現場に近しい関係者は意外と団結力が強いのと、一応謎にするという 方針から外には出てこない・コロンボファンで現場に近い方たちは現場のスタッフ達と 仲良くしていたいので知っていても外には公表しない・それとも、 ただ単に持ち道具の人がファーストネームが無いのは変だから適当に書いておいた、 等が考えられると思います。
    上に書いたような事はよくあります。ファーストネームも現場からすれば、 それ程重要な事ではないんだと思います。
    小道具はよっぽど特殊な物で無い限り複数作っておくのが普通です。
    紛失や汚れた時の為です。
    次に、写真が貼ってない件ですが、意外とコロンボの権利関係はうるさいらしく、 日本で新撮して作るのはたぶんNGだと思われます。
    そういうことで言えば、やはり新シリーズをつくるにあたって、後ではめ込み用の 写真だと思います。海外への売り込み時期に間に合わなかっただけだとおもいます。
    貼り忘れは無いと思いますがよくあるのが、スチール撮影する番宣カマラマンが 興味が無い場合こういうものだと思い込んでそのまま撮ってしまう事もあります。


    さて、どう判断を下したものだろうか?
    これに対する最良の答え、それはテッド氏のメールの中にあった。


    すべてを提示すること、それは何かを推測する楽しみを切り捨てることと同じです。
    もし答えを知ってしまったとすれば、もうこうした推測ゲームは楽しめなくなって しまうのです。


    そういうわけで、この件はここまで。
    いったいどういう経緯でこのIDに Frank とタイプされたのか、そしてコロンボの 本当のファーストネームは?
    それは「永遠の謎」なのだ。


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2.コロンボの階級は?
    警部補(Lieutenant)
    日本語の番組タイトルは「刑事コロンボ」、劇中では「コロンボ警部」とされているが、 正確には「警部補」。

    コロンボ・ファンの脚本家、三谷幸喜が書いたドラマの主人公・古畑任三郎が警部補なのも、 ここにその所以があると思われる。



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3.コロンボの車について
    プジョー403カブリオレ(Peugeot403Cabriolet)
    フランスの自動車メーカー・プジョーは1955年、403シリーズとして まずベルリーヌを、そして翌年カブリオレを発表した。
    403の造形はイタリアのカーデザイナー、ピニンファリーナによるもので、 プジョーは403以降の多くを彼にデザインさせるほど、このデザインを気に入ったようだ。
    対米輸出用に403USAというモデルもあったようだが、コロンボの愛車は 1956年9月に発表された2ドアタイプのカブリオレだと思われる。
    '75『中二時代』の記事(構成・三谷茉沙夫氏)には'59年製とある。
    CICビクターから発売されているLDボックスvol.8「秒読みの殺人」の解説で、 石上三登志氏は「プジョー203」と書いておられるが、403が正解。
    (風雅書房刊『刑事コロンボの秘密』をお持ちの方は77ページの写真、 開けられたボンネットの先端にご注目。‘403’のナンバーが見える。 またヒンジがドアの前に付いたのも、プジョーでは403が最初)
    総排気量は1468cc、58馬力、ガソリンエンジン水冷直列4気筒OHV。

    403シリーズには4段セミオートマチックの403J、403CJ、ディーゼルエンジンを積んだ 403D、排気量1290ccの403/7、後継モデル404が発表された後にギアボックスを404と 共通にした403Bなど、多くのバリエーションが登場した。
    シリーズの一部はベルリーヌのデビューから12年後の1967年までつくり続けられ、 生産台数は1,214,126台にも及んだというから、当時のフランスではかなりポピュラーな シルエットだったのだろう。
    (参考文献:(株)ネコ・パブリッシング ワールド・カー・ガイド10 ・プジョー)

    コロンボの愛車はソフトトップ(幌が開閉できる=カブリオレ・コンバーチブル)、「断たれた音」「さらば提督」では オープンにしている。
    幌は25話までは黒に近いグレー、26話以降は白いものに張り替えてある。
    ナンバーは「044APD」、25話までに「15万キロは走っている」プジョー、 中古車ディーラーが付けた「最高の下取り額」は、80ドル。
    シートベルトが取れてしまっていて、陸運局の試験官に注意される場面も。
    「闘牛士の栄光」でタクシーに追突。「黄金のバックルでは停め損なってパトカーに追突、 「秒読みの殺人」では外れたバックミラーを直そうとしたため蛇行、 逆にパトカーに追突され、コロンボはむち打ちに。
    旧シリーズ最終話「策謀の結末」ではパンクし、レッカー移動されるものの、 その後橋を疾走する勇姿の空撮が見られる。

    旧シリーズではフェンダーミラーだったが、新シリーズでは丸形ドアミラーに、 ナンバーは「448 DZB」に変更されている。



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4.日本語版について
    「刑事コロンボ」は、1972年8月、NHKがUHFで行っていたテスト放映で日本デビュー。
    同年12月、VHFで放映が始まった。

    爆発シーンのストップモーションにオープニングタイトルが重なる「第三の終章」放送予定日 前日(1974年8月30日)、「東アジア反日武装戦線」による三菱重工本社ビル爆破事件が発生、NHKが急遽、放送作品を「愛情の計算」に差し替えるというエピソードも残っている。

    「刑事コロンボ」はその後、1981年の「さよなら特集」(シリーズから5本を再放送)を 最後に民放(NTV系列「水曜ロードショー」)へと放映の場を移す。
    1980年代後半、新シリーズ放映のテストマーケティングの意味も含めてか、 深夜にシリーズの連続放映があった(NTVでの番組名は『深夜的迷宮』)。この放映と CICビクターによるビデオリリースが、(静かな?)コロンボ・ブームの再燃に 一役買ったことは間違いないだろう。
    最近では衛星放送、CATV、CD-ROMなど、多くのメディアが登場、新エピソードの 日本語版初公開の場も様々になっている(詳細は 4-2 参照)
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    4-1.声優

    初代コロンボ役には俳優・小池朝雄。
    「殺人処方箋」から「策謀の結末」までの45作品で“コロンボ”を演じ、 「コロンボ(ピーター・フォーク)=小池朝雄」という方程式すら成り立つ (?)ほどの「はまり役」になった。
    小池朝雄は「文学座」を経て劇団「雲」へ。舞台、映画、テレビ、吹き替えなど出演多数。
    1985年3月23日午前3時34分、肺不全のため東京・築地の 国立がんセンターで死去。享年54歳。

    2代目コロンボ役は、「文芸座」で小池の後輩でもある石田太郎。
    コロンボの新シリーズ放映が決まったとき、誰がコロンボを演じるのかが話題になった。
    小池から石田への交代は、「スーパーマン」でジーン・ハックマンを 演じていた小池が「2」の日本語収録前に逝去、石田が後を継いだのが初めらしい。
    ドラマにも時々出演している石田だが、手っ取り早くどんな顔なのかを見たい向きには、 「警部補・古畑任三郎」第5話を。

    3代目、というか、3人目のコロンボは銀河万丈。
    セル&レンタル中のシリーズでは、もともと日本語版がつくられていない部分 (放映時にカットされていた部分)のコロンボを、銀河があてている。
    WOWOWで初放映された「復讐を抱いて眠れ」などのコロンボもこの人。
    銀河万丈というと、個人的には「それゆけ!ココロジー」という番組のナレーションが 印象に残っている。

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    4-2.メディア・放送局別での違い

    日本語版には、まず

      a. NHK版
      b. 日本テレビ版(以下NTV版)
      c. WOWOW/スターチャンネル版
    がある。
    日本テレビ系列の民放で放映された旧シリーズは基本的にNHK版と同じだが、 「殺人処方箋」「黒のエチュード」には違いがある。
    「殺人処方箋」については、犯人のジーン・バリーをNHK放映時には瑳川哲朗が演じ、 NTV版では若山弦蔵が演じた。
    「黒のエチュード」には、もともと75分版(CM入りで90分枠放映用)と、96分版(同120分枠放映用)の 2バージョンがあり、(DVD vol.5に両バージョン収録されている)、NHKでは75分版を、NTV系列では 96分版を放映したため、両者の日本語版には、翻訳・キャスティングに違いがある。 NHK版ではジョン・カサベテスを長谷川哲夫、NTV版では阪脩が演じている。
    DVD vol.5のパッケージには、75分版について「日本未放映のため・・・」とあるが、これは誤り。
    「悪の温室」「自縛の紐」「策謀の結末」の3本には、コロンボを石田太郎が演じたバージョンがある。 (NTV系列で放映。他の声優も一新されている)
    小池死後、コロンボのイメージを石田で統一しようという試みから制作されたものと思われるが、 結局3本にとどまった。

    「c. WOWOW/スターチャンネル版」は、有料放送局で初放送のエピソード。
    「復讐を抱いて眠れ」「奪われた旋律」(WOWOWが初)、「殺意のナイトクラブ」(スターチャンネルが初)などがあり、 その後、他の有料放送や地上波(日本テレビ)へと流れている。
    WOWOWでは銀河万丈、スターチャンネルでは字幕放送というのが現在のパターンのようだ。

    次に登場するのが、
      d. ビデオ版(新シリーズ)
      e. CD-ROM版
      f. LD版
      g. ビデオ版(旧シリーズ)
      h. DVD版(fと同じ)
    アメリカでシリーズ再開後、新作はまずビデオで日本に上陸した。
    『刑事コロンボ'90』と題され、まず「超魔術への招待」「予期せぬシナリオ」 「黒いドレスの娼婦」「おもちゃの兵隊」の4作品が、そして後に「殺人講義」が リリースされた。
    これらは字幕版で、旧シリーズのビデオ化の先駆けとなった。
    (新シリーズビデオの登場以前に、「殺人処方箋」「構想の死角」が オール字幕版でビデオリリースされている。)

    CD-ROM版は「マルチメディア英会話シリーズ」としてアスキーが出版したもの。
    あえてここに項目として入れたのは、新シリーズ「死者のギャンブル」が、テレビ放送よりも先に、 このCD-ROMシリーズで登場したため。
    LDとビデオ(旧シリーズ)、DVDはどれも「完全版」と銘打たれている。
    LDはテレビ放映時、時間的都合でカットされ、日本語吹き替えをしていなかった部分を字幕で、 ビデオは追加録音で処理している(追加部分のコロンボ役を銀河万丈が担当、 犯人や脇役も、可能な限り当時のキャスティングに沿った形になっている。 LDでもvol.7からは日本語音声版が採用されている)。

(文中敬称略)