レストラン振興協会の会員であるイタリアン・レストラン“ヴィットリオ”のオーナー、
ヴィットリオ・ロッシが亡くなった。直前に彼と食事をしていたのがテレビ、雑誌で活躍中の
人気料理評論家、ポール・ジェラード(ルイ・ジュールダン)。
ジェラードはレストラン振興協会から協会加盟のレストランをメディアで取り上げ、
その代償として法外な金額を受け取っていた。つまるところ恐喝である。
しかしロッシが反旗を翻した。もう金は払わない。それどころかこれまでの経緯を世間に
公表すると言い出した。
ジェラードはロッシを亡き者にしようと画策、料理の知識を利用してロッシの最後の晩餐に
毒物を混入し殺害した。
警察からの連絡で殺害現場に戻るジェラード。するとそこにはとりあえず腹ごしらえをする
コロンボ警部。
コロンボはロッシの残された手帳や小切手から金の流れを洗い出し真相に迫る。
だがそんなコロンボにもジェラードの魔の手が伸びる。
毒物混入の方法をあえて伏せ、視聴者にもそのトリックを問う演出。知ってか知らずか、
自らの命をも賭す事となるコロンボの真相究明への迫力。
その鮮やかな手捌きは時代を超えて今尚輝いている。
1991年度のアカデミー賞を“占領”したジョナサン・デミ。主要5部門を『羊たちの沈黙』で
かっさらったその彼の若き日の監督作品。
ここでは日本とイタリアを中心とした美食の数々で観る者の食欲を刺激、
コロンボ警部も食い通しだ(ホントうまそうに食べてます)。
最後にはシェフ顔負け(?)の料理の腕も披露している。イタリア語の会話シーンもあり、
イタリアンの本領大いに発揮といったところ。
また“マコ”の名でハリウッドで活躍する俳優、岩松信も出演。映画『砲艦サンパブロ』の演技では
1966年度のアカデミー助演男優賞にノミネートされた経歴を持っており、
『セブン・イヤーズ・イン・チベット』にも登場している。
監督は『羊たちの沈黙』(1991)のジョナサン・デミ。
中盤「ゲイシャ」が登場するが、そのはにかみ方たるや、もう時代劇の世界!浴衣をワイシャツの上に
着ているのも、日本人から見るとやっぱり妙だ。そしてその浴衣に書かれた文字、
それは「松竹梅」だった。
「構想の死角」で
「料理の腕は最低ですが、オムレツだけはカミさんも認めてるんです」
というコロンボだが、「二つの顔」でも料理番組に
飛び入り参加したように、ここでも料理の腕を振るう。父親譲りの "牛肉の炒め焼き"をつくり、
ジェラードに「君は料理人になるべきだった」と言われている。
物的証拠を手にとって、「証拠ってのはこういうのを言うんです」という台詞は、そっくりそのまま
『警部補 古畑任三郎』でも使われていた。
読者・岩崎 巧さんよりのコメント
「美食の報酬でフグ毒を使いますが、あの種類(はりせんぼん)には毒がありません。
また、フグ毒はテトロドトキシンという神経毒なのであのように突然苦しんで死んだ
りしないのです。」
1997年記